北米で働くと、日本との違いを肌で感じます。
私は日本のSIerでキャリアをスタートし、その後、外資IT企業、北米企業での勤務を経て、現在は大手外資コンサルティングファームで働いています。北米の永住権も取得しました。
日本と北米、両方で働いた経験から言えることがあります。どちらが良い・悪いではなく、明確に「違う」のです。この違いを理解せずに海外キャリアを目指すと、入社後にギャップを感じることになります。
この記事では、北米で働いて感じた日本との違いを、実体験をもとに率直に共有します。海外キャリアを目指す人の参考になれば幸いです。
働き方の違い
まず、日常の働き方における違いを示します。
違い① 成果がすべて
北米では、プロセスより成果が重視されます。
日本では「頑張っている姿勢」「残業して努力している様子」も評価の対象になることがあります。北米では、そのような姿勢は評価されません。見られるのは「何を達成したか」だけです。
どれだけ長時間働いても、成果が出なければ評価されません。逆に、短時間で成果を出せば高く評価されます。「忙しいアピール」は無意味で、むしろ「効率が悪い人」と見なされるリスクすらあります。
最初は戸惑いましたが、慣れると非常にシンプルです。成果を出すことに集中すればいい。余計なことを気にしなくて済みます。
違い② 自分の意見を言うことが求められる
北米では、会議で発言しないと「存在しない」のと同じです。
日本では、会議で黙っていても、後から個別にフォローすれば問題ないことが多いです。北米では、会議で発言しないと「意見がない人」「貢献していない人」と見なされます。
最初は、英語で発言することに抵抗がありました。「間違った英語を話したら恥ずかしい」「的外れなことを言ったらどうしよう」という不安がありました。
しかし、沈黙しているより、拙い英語でも発言する方が評価されることを学びました。意見を言い、議論に参加することが求められる文化です。
違い③ フィードバックが直接的
北米では、フィードバックが直接的です。
日本では、遠回しに伝えたり、空気を読んで察することが求められたりします。北米では、良いことも悪いことも、ストレートに伝えられます。
最初は、直接的なフィードバックに驚きました。「この資料は分かりにくい」「このアプローチは間違っている」など、はっきり言われます。
しかし、これは個人攻撃ではなく、仕事を良くするためのフィードバックです。慣れると、曖昧なフィードバックより、直接的に言ってもらえる方がありがたいと感じるようになりました。
逆に、自分からもフィードバックを求め、直接的に意見を伝えることが求められます。
違い④ ワークライフバランスへの意識
北米では、ワークライフバランスへの意識が高いです。
もちろん、忙しい時期は長時間働くこともあります。しかし、定時で帰ること、休暇を取ることに対する罪悪感がありません。
日本では、周りが残業しているから帰りにくい、休暇を取ると申し訳ないという空気がありました。北米では、自分の仕事が終われば帰るのが当たり前。休暇は権利として堂々と取ります。
特に驚いたのは、マネージャーやシニアメンバーほど、しっかり休暇を取ることです。彼らが率先して休むことで、チーム全体が休みやすくなっています。
違い⑤ ジョブ型の働き方
北米では、ジョブディスクリプション(職務記述書)に書かれた範囲の仕事をします。
日本では、「これも手伝って」「あれもお願い」と、担当範囲が曖昧に広がることがあります。北米では、自分の役割が明確で、その範囲の仕事に集中します。
これは良い面と難しい面があります。良い面は、自分の専門性に集中できること。難しい面は、自分の役割以外のことを頼まれると「それは私の仕事ではない」と言われることがあること。
日本的な「助け合い」の感覚とは異なります。ただし、チームとして協力することは当然あります。役割分担が明確な上での協力です。
キャリアの違い
次に、キャリアに関する違いを示します。
違い① 転職が当たり前
北米では、転職は当たり前のキャリア戦略です。
日本では、転職回数が多いとネガティブに見られることがあります。北米では、2〜3年ごとに転職するのは普通です。むしろ、一つの会社に長くいすぎると「成長意欲がない」と見なされることすらあります。
転職を通じて年収を上げ、経験の幅を広げ、キャリアを築いていく。これが北米では標準的なキャリアの考え方です。
違い② レイオフがある
北米では、レイオフ(整理解雇)が珍しくありません。
会社の業績が悪化すれば、突然解雇されることがあります。私自身は経験していませんが、同僚がレイオフされるのを何度も見てきました。
日本の「終身雇用」に慣れた人には、大きなカルチャーショックかもしれません。しかし、北米ではこれが現実です。常に自分の市場価値を高め、転職できる状態を維持しておくことが重要です。
レイオフ後も、多くの人はすぐに次の仕事を見つけています。転職が当たり前の文化だからこそ、雇用の流動性が高いです。
違い③ 年功序列がない
北米では、年齢や勤続年数は関係ありません。
30代でディレクター、40代でVP(Vice President)になる人もいれば、50代でもエンジニアとして働き続ける人もいます。年齢に関係なく、能力と成果で評価されます。
逆に言えば、成果を出さなければ昇進できません。年齢を重ねれば自動的に給料が上がる、という仕組みはありません。
違い④ 専門性が重視される
北米では、ジェネラリストよりスペシャリストが評価されます。
「何でもできます」より「◯◯の専門家です」の方が、転職市場で価値があります。自分の専門領域を明確にし、その領域で深い知識と経験を持つことが重要です。
日本では、ローテーションで様々な部署を経験させ、ジェネラリストを育てる傾向があります。北米では、最初から専門領域を決めて、その道を深めていくキャリアが一般的です。
違い⑤ 自分でキャリアを作る
北米では、会社がキャリアを作ってくれることはありません。
日本では、会社が研修を用意し、ローテーションで経験を積ませ、キャリアパスを示してくれることがあります。北米では、自分で学び、自分で機会を作り、自分でキャリアを築く必要があります。
上司との1on1で、自分のキャリア目標を伝え、必要な機会を自分から求めていく。受け身では何も起こりません。
コミュニケーションの違い
コミュニケーションスタイルの違いも大きいです。
違い① ローコンテクスト文化
北米は、ローコンテクスト(低文脈)文化です。
日本は、ハイコンテクスト(高文脈)文化です。言葉にしなくても、空気を読んで察することが期待されます。北米では、言葉にしなければ伝わりません。
「言わなくても分かるだろう」は通用しません。伝えたいことは、明確に言葉にする必要があります。逆に、相手の意図が分からなければ、遠慮なく質問することが求められます。
違い② 質問することが評価される
北米では、質問することがポジティブに捉えられます。
日本では、「そんなことも知らないのか」と思われることを恐れて、質問を躊躇することがあります。北米では、分からないことを質問するのは当然のこと。むしろ、質問しないで間違った方向に進む方が問題です。
「質問がないのは、理解していない証拠」と見なされることすらあります。積極的に質問し、理解を深めることが求められます。
違い③ 自己主張の仕方
北米では、自分の成果を積極的にアピールすることが求められます。
日本では、自己アピールは「謙虚さがない」と見なされることがあります。北米では、自分の成果を伝えなければ、誰も気づいてくれません。
「私はこれを達成しました」「私のおかげでプロジェクトが成功しました」と言うのは、傲慢ではなく、事実を伝えているだけです。
最初は、自己アピールに抵抗がありましたが、これも北米で働く上で必要なスキルだと学びました。
違い④ 雑談の重要性
北米では、スモールトーク(雑談)が重要です。
会議の冒頭、1on1の最初、チャットのやり取りなど、仕事の話に入る前に雑談をすることが多いです。週末の予定、家族のこと、趣味のことなど。
これは単なる社交辞令ではなく、関係構築の一部です。仕事だけの関係ではなく、人間としての関係を築くことが重視されています。
英語でスモールトークができるようになると、職場での人間関係がスムーズになりました。
評価・報酬の違い
評価や報酬に関する違いも示します。
違い① 評価がシビア
北米では、評価がシビアです。
成果が出ていなければ、はっきりと低い評価をつけられます。改善が見られなければ、PIP(Performance Improvement Plan)に入り、最終的には解雇されることもあります。
日本のように「頑張っているから」「将来に期待して」という温情的な評価はありません。成果が出ていなければ、それが評価に反映されます。
違い② 報酬の透明性
北米では、報酬の透明性が高い傾向があります。
Levels.fyi、Glassdoorなどのサイトで、企業ごと、ポジションごとの年収レンジが公開されています。自分の市場価値を把握しやすく、年収交渉の材料になります。
最近は、給与レンジを求人に掲載することを義務付ける州も増えています。透明性が高いことで、適正な報酬を得やすくなっています。
違い③ ストックオプション・RSUの比重
北米のテック企業では、RSU(制限付き株式報酬)が報酬の大きな部分を占めます。
ベースサラリーに加えて、RSUがトータルコンペンセーションの30%〜50%を占めることも珍しくありません。株価が上がれば報酬も上がり、下がれば減ります。
日本企業では、ストックオプションやRSUは一般的ではありません。これも北米の報酬体系の大きな特徴です。
違い④ 年収交渉の文化
北米では、年収交渉が当たり前です。
オファーを受けたら、そのまま受け入れるのではなく、交渉するのが一般的です。「もう少しベースサラリーを上げてほしい」「サインオンボーナスを追加してほしい」など、堂々と交渉します。
日本では、提示された条件をそのまま受け入れることが多いですが、北米では交渉しないと損をします。
良かったこと・苦労したこと
北米で働いて良かったことと、苦労したことを率直に共有します。
良かったこと
成果にフォーカスできる プロセスや見せかけの努力ではなく、成果を出すことに集中できます。余計な「お作法」を気にしなくていいのは楽です。
多様な人と働ける 様々な国、バックグラウンドの人と一緒に働けます。視野が広がり、多様な考え方に触れられます。
市場価値が上がる 北米での経験は、グローバルな市場で通用するキャリア資本になります。転職の選択肢が広がりました。
ワークライフバランス 休暇を堂々と取れる文化は、精神的に楽です。メリハリをつけて働けます。
報酬が高い 北米のテック企業の報酬は、日本より高いです。特にRSUを含めると、大きな差があります。
苦労したこと
英語のハンデ ネイティブと比べると、どうしても英語力にハンデがあります。会議で発言するスピード、ニュアンスの理解、ジョークへの反応など、100%同じ土俵には立てません。
ただし、完璧な英語でなくても、伝えたいことが伝われば仕事はできます。最初は苦労しましたが、場数を踏むうちに慣れていきました。
文化的な孤独感 同じ文化的背景を持つ同僚が少ないと、孤独を感じることがあります。日本人同士なら「あうんの呼吸」で通じることが、いちいち説明しないと伝わりません。
日本人コミュニティとの繋がりを持つこと、日本の友人との関係を維持することで、バランスを取っていました。
レイオフの不安 いつ解雇されるか分からない不安は、常にあります。景気が悪くなれば、外国人は真っ先にレイオフの対象になるリスクもあります。
常に市場価値を高め、転職できる状態を維持しておくことで、不安を軽減していました。
ビザの問題 最初はビザで滞在していたため、ビザの更新、転職時のビザ手続きなど、ストレスがありました。永住権を取得してからは楽になりましたが、それまでは常にビザのことが頭にありました。
海外キャリアを目指す人へ
最後に、海外キャリアを目指す人へのメッセージです。
違いを理解した上で挑戦する
日本と北米は、働き方もキャリア観も異なります。
どちらが良い・悪いではなく、「違う」のです。この違いを理解し、自分に合っているかを見極めた上で挑戦してください。
「日本が嫌だから海外に行く」というネガティブな理由だけで海外に出ると、北米でも同じように不満を感じる可能性があります。
英語は入ってから伸びる
完璧な英語力がなくても、海外で働くことは可能です。
私も最初は英語に自信がありませんでした。しかし、環境に飛び込めば、強制的に英語を使うことになり、自然と伸びていきます。
最低限のコミュニケーションができるレベルがあれば、あとは現地で磨けます。英語力の不安を理由に挑戦を諦めるのはもったいないです。
キャリア資本として考える
海外経験は、キャリア資本として大きな価値があります。
グローバルな視野、多様な環境で働く力、英語力。これらは、日本に戻ってからも活きるスキルです。
数年でも北米で働く経験があれば、その後のキャリアの選択肢が広がります。
最悪、戻ればいい
海外で働くことに不安があるなら、「最悪、日本に戻ればいい」と考えてください。
日本のIT人材市場は売り手市場です。海外経験があれば、むしろ日本での転職は有利になります。
失敗しても取り返しがつく。そう思えば、挑戦のハードルは下がります。
まとめ:北米と日本は「違う」
北米で働いて感じた日本との違いについてまとめます。
北米では、成果がすべて、自分の意見を言うことが求められる、フィードバックが直接的、転職が当たり前、専門性が重視される、などの特徴があります。
これらは日本との「違い」であり、どちらが良い・悪いではありません。自分に合っているかを見極め、合っていると思えば挑戦する価値があります。
海外キャリアは、キャリア資本を大きく高める選択肢です。英語力や文化の違いに不安があっても、飛び込めば何とかなることも多いです。


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