SIerで働いているけど、Web系に転職すべきか迷っている。この悩みを抱えるエンジニアは多いです。
結論から言うと、SIerからWeb系への転職は、人によって正解にも不正解にもなります。メリットとデメリットを理解し、自分に合った選択をすることが重要です。
私は日本のSIerでキャリアをスタートし、その後、外資IT企業、外資コンサルティングファームへと転職しました。SIerとWeb系、両方の世界を知っています。
この記事では、SIerからWeb系に転職するメリット・デメリットを、正直に解説します。
SIerとWeb系の違い
まず、SIerとWeb系の違いを整理します。
SIer(システムインテグレーター)とは
SIerは、クライアント企業のシステム開発を受託する企業です。
特徴
- クライアントの要望に応じてシステムを構築
- 大規模なエンタープライズシステムが多い
- ウォーターフォール型の開発が中心
- 元請け、二次請け、三次請けの多重下請け構造
- 長期的なプロジェクト(数年単位)が多い
代表的な企業 NTTデータ、富士通、日立製作所、NEC、野村総合研究所、TIS、SCSKなど
Web系とは
Web系は、自社のWebサービスやアプリを開発・運営する企業です。
特徴
- 自社プロダクトを開発・運営
- ユーザー向けのサービスが中心
- アジャイル型の開発が中心
- フラットな組織構造
- 短いリリースサイクル(週単位、日単位)
代表的な企業 Google、Amazon、メルカリ、サイバーエージェント、楽天、LINE、DeNA、SmartHRなど
主な違いの比較
| 項目 | SIer | Web系 |
|---|---|---|
| ビジネスモデル | 受託開発 | 自社サービス |
| 顧客 | 企業(BtoB) | 一般ユーザー(BtoC)またはBtoB SaaS |
| 開発手法 | ウォーターフォール中心 | アジャイル中心 |
| 技術スタック | Java、COBOL、Oracle等 | モダン技術(Go、Python、React、AWS等) |
| リリースサイクル | 数ヶ月〜数年 | 数日〜数週間 |
| 組織文化 | 階層的、年功序列 | フラット、実力主義 |
| 服装 | スーツ、ビジネスカジュアル | カジュアル |
| 平均年齢 | 高め | 低め |
SIerからWeb系に転職するメリット
SIerからWeb系に転職するメリットを説明します。
メリット① モダンな技術を使える
Web系では、モダンな技術スタックを使えます。
Web系でよく使われる技術
- 言語:Go、Python、TypeScript、Kotlin、Rust
- フレームワーク:React、Vue.js、Next.js、Ruby on Rails
- インフラ:AWS、GCP、Kubernetes、Docker
- その他:CI/CD、Infrastructure as Code、マイクロサービス
SIerでは、Java、COBOL、オンプレミスのサーバーなど、レガシーな技術を使うことが多いです。Web系に転職すれば、市場価値の高いモダンな技術を身につけられます。
メリット② 開発に集中できる
Web系では、エンジニアは開発に集中できます。
SIerでは、ドキュメント作成、会議、調整業務に時間を取られることが多いです。コードを書く時間は、全体の2〜3割ということも珍しくありません。
Web系では、エンジニアの本業である「コードを書くこと」に集中できます。開発に集中したいエンジニアにとって、これは大きなメリットです。
メリット③ 自分の作ったものがユーザーに届く
Web系では、自分が作ったプロダクトが直接ユーザーに届きます。
SIerでは、クライアントのシステムを作るため、自分の名前は表に出ません。また、完成まで数年かかることもあり、達成感を感じにくいです。
Web系では、自分が書いたコードが数日〜数週間でリリースされ、ユーザーの反応を直接見られます。この「手触り感」は、大きなモチベーションになります。
メリット④ フラットな組織文化
Web系では、フラットな組織文化が一般的です。
SIerでは、年功序列、階層的な組織、上下関係が強い傾向があります。若手は発言しにくく、意思決定に時間がかかります。
Web系では、年齢や役職に関係なく意見を言えます。意思決定も速いです。自分の意見を発信したいエンジニアにとって、働きやすい環境です。
メリット⑤ 柔軟な働き方
Web系では、柔軟な働き方ができることが多いです。
よくある働き方
- リモートワーク(フルリモートも多い)
- フレックスタイム
- 私服勤務
- 副業OK
SIerでは、クライアント先への常駐、スーツ着用、出社必須というケースがまだ多いです。働き方の自由度を重視するなら、Web系のメリットは大きいです。
メリット⑥ 成長スピードが速い
Web系では、成長スピードが速いです。
リリースサイクルが短いため、多くの経験を短期間で積めます。新しい技術への挑戦も推奨されます。また、優秀なエンジニアが多い環境で働くことで、自分のレベルも引き上げられます。
SIerで3年かかる成長を、Web系では1年で経験できることもあります。
メリット⑦ エンジニアが尊重される
Web系では、エンジニアが尊重されます。
Web系企業にとって、エンジニアは価値を生み出す中核です。技術力が高いエンジニアは、正当に評価されます。
SIerでは、エンジニアは「人月」で計算されるリソースとして扱われることがあります。技術力よりも、マネジメント能力や調整能力が評価される傾向があります。
SIerからWeb系に転職するデメリット
SIerからWeb系に転職するデメリットも説明します。
デメリット① 年収が下がることがある
Web系への転職で、年収が下がることがあります。
特に、大手SIer(NTTデータ、野村総合研究所など)からの転職では、年収が下がるケースがあります。
年収比較の例
| 企業タイプ | 30歳の年収目安 |
|---|---|
| 大手SIer | 600万円〜800万円 |
| Web系(メガベンチャー) | 600万円〜900万円 |
| Web系(スタートアップ) | 450万円〜700万円 |
メガベンチャー(メルカリ、サイバーエージェントなど)であれば、大手SIerと同等以上の年収も狙えます。しかし、スタートアップでは年収が下がることもあります。
デメリット② 雇用の安定性が低い
Web系は、SIerより雇用の安定性が低い傾向があります。
大手SIerは、日系大企業であり、よほどのことがない限り解雇されません。一方、Web系(特にスタートアップ)は、業績悪化によるリストラ、事業撤退による解雇のリスクがあります。
安定を重視するなら、この点は考慮が必要です。
デメリット③ 大規模システムの経験が積みにくい
Web系では、大規模なエンタープライズシステムの経験が積みにくいです。
SIerでは、銀行の勘定系システム、官公庁のシステム、大企業の基幹システムなど、大規模で複雑なシステムに関われます。
Web系では、自社サービスの開発が中心です。トラフィックが大きいサービスはありますが、SIerのような「数百人が関わる数年がかりのプロジェクト」は少ないです。
大規模システムの経験を積みたいなら、SIerに残る方が良いかもしれません。
デメリット④ 上流工程の経験が積みにくい
Web系では、上流工程(要件定義、基本設計)の経験が積みにくいです。
SIerでは、クライアントとの折衝、要件定義、基本設計など、上流工程を経験できます。これはPMやコンサルタントへのキャリアパスにつながります。
Web系では、開発が中心です。プロダクトマネージャーやテックリードになれば上流に関わりますが、一般的なエンジニアは実装が中心です。
デメリット⑤ 福利厚生が劣ることがある
Web系は、大手SIerより福利厚生が劣ることがあります。
大手SIerの福利厚生(例)
- 住宅手当
- 家族手当
- 退職金(確定給付年金)
- 保養所
- 社員寮
Web系(特にスタートアップ)では、これらの福利厚生がないことも多いです。年収だけでなく、福利厚生も含めたトータルで比較してください。
デメリット⑥ 技術の変化が激しい
Web系では、技術の変化が激しいです。
新しい言語、フレームワーク、ツールが次々と登場し、常に学び続ける必要があります。数年前の技術がすぐに陳腐化することもあります。
SIerでは、技術の変化は比較的緩やかです。一度身につけた技術(Javaなど)を長く使い続けられます。
常に新しいことを学び続けるのが好きな人にはメリットですが、安定した技術を深掘りしたい人にはデメリットになります。
デメリット⑦ キャリアパスが不明確なことがある
Web系(特にスタートアップ)では、キャリアパスが不明確なことがあります。
大手SIerでは、主任 → 係長 → 課長 → 部長という明確なキャリアパスがあります。何年でどのポジションに就けるか、ある程度予測できます。
Web系では、組織がフラットな分、キャリアパスが不明確なことがあります。「どうすれば昇進できるのか」「将来どうなるのか」が見えにくいこともあります。
SIerからWeb系に転職すべき人
SIerからWeb系に転職すべき人の特徴を示します。
転職すべき人① モダンな技術を使いたい
レガシーな技術ではなく、モダンな技術を使いたい人は、Web系に転職すべきです。
SIerにいる限り、Java、Oracle、オンプレミスのサーバーから逃れられないことが多いです。クラウド、コンテナ、マイクロサービスなどを使いたいなら、Web系に移るのが現実的です。
転職すべき人② 開発に集中したい
ドキュメント作成、会議、調整業務ではなく、開発に集中したい人は、Web系に転職すべきです。
Web系では、エンジニアは開発に集中できます。コードを書く時間を最大化したいなら、Web系の環境が合っています。
転職すべき人③ フラットな組織で働きたい
年功序列、階層的な組織に馴染めない人は、Web系に転職すべきです。
Web系では、年齢や役職に関係なく、実力で評価されます。自分の意見を発信し、主体的に動きたい人に向いています。
転職すべき人④ 柔軟な働き方をしたい
リモートワーク、フレックスタイム、私服勤務など、柔軟な働き方をしたい人は、Web系に転職すべきです。
SIerでは、クライアント先常駐、スーツ、出社必須というケースがまだ多いです。働き方の自由度を重視するなら、Web系が合っています。
転職すべき人⑤ 成長スピードを重視する
短期間で多くの経験を積み、成長したい人は、Web系に転職すべきです。
Web系では、リリースサイクルが短く、新しい技術への挑戦も推奨されます。成長スピードを最優先するなら、Web系の環境が適しています。
SIerに残るべき人
逆に、SIerに残るべき人の特徴も示します。
残るべき人① 安定を最優先する
雇用の安定、長期的なキャリアパスを最優先する人は、SIerに残るべきです。
大手SIerは、日系大企業の安定感があります。Web系(特にスタートアップ)のリスクを取りたくないなら、SIerが安全です。
残るべき人② 大規模システムに関わりたい
銀行、官公庁、大企業の大規模システムに関わりたい人は、SIerに残るべきです。
これらのシステムは、SIerでしか経験できません。大規模システムのアーキテクチャ、プロジェクトマネジメントを学びたいなら、SIerが最適です。
残るべき人③ 上流工程を経験したい
要件定義、基本設計など、上流工程を経験したい人は、SIerに残るべきです。
上流工程の経験は、PMやコンサルタントへのキャリアパスにつながります。Web系では、この経験が積みにくいです。
残るべき人④ PMやコンサルを目指している
将来的にPMやITコンサルタントを目指している人は、SIerでの経験が活きます。
クライアントとの折衝、プロジェクトマネジメント、上流工程の経験は、PM・コンサルへの転職で評価されます。
残るべき人⑤ 福利厚生を重視する
住宅手当、退職金、保養所など、福利厚生を重視する人は、大手SIerに残るべきです。
Web系(特にスタートアップ)では、これらの福利厚生がないことが多いです。
SIerからWeb系への転職で注意すべきこと
SIerからWeb系への転職で注意すべきことを示します。
注意① 技術力を身につけてから転職する
SIerでの経験だけでは、Web系の選考で苦戦することがあります。
転職前にやるべきこと
- モダンな言語(Go、Python、TypeScriptなど)を学ぶ
- クラウド(AWS、GCP)を触る
- GitHubでポートフォリオを作る
- 個人開発でWebサービスを作る
- 技術ブログを書く
技術力を証明できるものがあると、Web系の選考で有利になります。
注意② 年収ダウンを覚悟する場合もある
大手SIerからWeb系への転職では、年収が下がることがあります。
特に、スタートアップへの転職では、年収ダウンを覚悟してください。ただし、メガベンチャー(メルカリ、サイバーエージェントなど)であれば、大手SIer以上の年収も狙えます。
注意③ 企業選びを慎重に行う
Web系といっても、企業によって文化は大きく異なります。
確認すべきこと
- 技術スタック
- 開発文化(アジャイル、コードレビュー、CI/CDなど)
- 組織文化
- 働き方(リモート、フレックスなど)
- 成長機会
- 年収・福利厚生
「Web系なら何でも良い」ではなく、自分に合った企業を選んでください。
注意④ 「SIerは全部ダメ」という思い込みを捨てる
SIerを脱出したいあまり、「SIerは全部ダメ」と思い込むのは危険です。
SIerにも良い点はあります。大規模システムの経験、上流工程の経験、安定した雇用、福利厚生など。これらを捨ててまで転職する価値があるか、冷静に判断してください。
注意⑤ 転職先での苦労を覚悟する
Web系に転職しても、最初は苦労します。
覚悟すべきこと
- 新しい技術をキャッチアップする必要がある
- 開発スピードについていく必要がある
- 自走力が求められる
- 評価基準が異なる
「Web系に行けばすべて解決」と思っていると、ギャップに苦しむことになります。
SIerからWeb系への転職ルート
SIerからWeb系への具体的な転職ルートを示します。
ルート① 直接応募
Web系企業に直接応募する方法です。
メリット
- エージェント手数料がかからない分、採用されやすいことがある
- 企業の情報を直接得られる
デメリット
- 年収交渉を自分で行う必要がある
- 選考対策を自分で行う必要がある
ルート② 転職エージェント経由
IT・Web系に強い転職エージェントを使う方法です。
おすすめのエージェント
- レバテックキャリア
- Geekly
- マイナビIT AGENT
- リクルートエージェント(IT領域)
メリット
- 非公開求人にアクセスできる
- 年収交渉を代行してもらえる
- 選考対策をサポートしてもらえる
デメリット
- エージェントの質に左右される
ルート③ スカウトサービス
ビズリーチ、Lapras、Findyなどのスカウトサービスを使う方法です。
メリット
- 企業から直接スカウトが来る
- 自分の市場価値を確認できる
デメリット
- プロフィールを充実させる必要がある
- スカウトの質にばらつきがある
ルート④ リファラル(紹介)
Web系で働いている知人から紹介してもらう方法です。
メリット
- 選考通過率が高い
- 企業の内情を聞ける
デメリット
- 紹介してくれる知人が必要
よくある質問
SIerからWeb系への転職に関するよくある質問に答えます。
Q. SIerで何年経験があればWeb系に転職できる?
A. 2〜3年以上の経験があれば、転職は可能です。
ただし、経験年数よりも、技術力とポートフォリオが重要です。経験年数が短くても、技術力があれば転職できます。
Q. 30代でもWeb系に転職できる?
A. できます。
30代前半であれば、問題なく転職できます。30代後半でも、技術力があれば転職は可能です。ただし、ポジションによっては若い人が優先されることもあります。
Q. SIerでの経験はWeb系で評価される?
A. 一部は評価されます。
大規模システムの経験、上流工程の経験、プロジェクトマネジメントの経験は評価されることがあります。ただし、レガシー技術の経験は評価されにくいです。
Q. 未経験の言語でもWeb系に転職できる?
A. できますが、事前に学習しておくことが推奨されます。
Web系で使われる言語(Go、Python、TypeScriptなど)を事前に学習し、ポートフォリオを作っておくと、選考で有利になります。
Q. Web系に転職して後悔する人はいる?
A. います。
「思っていたのと違った」「SIerの方が良かった」と後悔する人もいます。転職前に、メリット・デメリットを理解し、自分に合っているか判断してください。
まとめ:SIerからWeb系への転職は「合う・合わない」で判断する
SIerからWeb系への転職についてまとめます。
SIerからWeb系への転職には、メリットとデメリットがあります。モダンな技術、開発への集中、フラットな組織、柔軟な働き方を求めるなら、Web系への転職はメリットが大きいです。
一方、安定、大規模システムの経験、上流工程の経験、福利厚生を重視するなら、SIerに残る方が良いかもしれません。
「SIerは全部ダメ」「Web系なら何でも良い」という思い込みは危険です。自分の価値観、キャリアゴール、ライフスタイルに合った選択をしてください。


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